親の財産を守り活かす『家族信託』完全ガイド

2025 年、日本の 65 歳以上人口は総人口の 30%を超える見込みです。高齢化の進展に伴い、認知症患者の増加が引き起こす “預金・不動産の凍結” という新たな課題が顕在化しています。本人の判断能力が下がると、銀行口座が利用できず、施設入居金や医療費の支払いに家族が苦労するケースが後を絶ちません。
従来、この問題の解決策は 成年後見制度 が中心でした。しかし、継続コストや柔軟性の低さがネックとなり、導入件数は必ずしも伸びていません。そこで今、実務家や専門誌で注目度が急上昇しているのが 「家族信託」 です。本記事では仕組みから実例、メリット・注意点までを総合的に解説し、「わが家に合った対策」を検討できるようサポートします。
家族信託とは――三つの登場人物で成り立つ民事信託
家族信託は、2006 年改正信託法に基づく 民事信託 の一種で、主に親族間で財産管理権限を移転する仕組みです。
| 役割 | 概要 | 例 |
| 委託者 | 財産を託す人 | 高齢の父母 |
| 受託者 | 財産を管理・処分する人 | 子ども |
| 受益者 | 信託財産から利益を受ける人 | 委託者(本人) |
委託者と受託者が 公正証書 で信託契約を交わし、
- 信託目的(介護費用確保・不動産管理 など)
- 信託財産(自宅、不動産、預金 など)
- 受益者と受益権の範囲
を定めます。不動産を含む場合は 信託登記、預金管理には 信託口口座(しんたくぐちこうざ) を用いることで、委託者の判断能力低下後も受託者が契約通りに資産を動かせます。
▼ 大まかな手続きフロー
① 信託契約締結(公正証書)
② 信託財産の特定・移転
③ 信託登記/信託口座開設
④ 管理・運用スタート(定期報告)
成年後見制度との主な違い

| 項目 | 家族信託 | 成年後見制度 |
| 開始時期 | 判断能力が十分あるうちに設定 | 判断能力低下後に開始 |
| 目的の幅 | 資産運用・相続設計まで柔軟 | 財産保全が中心 |
| 裁判所関与 | 原則なし(自主運用) | 常時監督あり |
| 継続コスト | 登記・公正証書費用のみで完結 | 月 1~3 万円の報酬が継続 |
| 家族の意思反映 | 受益者連続型など自由度が高い | 制限あり |
家族信託が選ばれる理由
家族信託が選ばれる理由を資産管理・不動産・税務の3つの観点で解説します。
資産管理
- 口座凍結を防止し、施設入居金や医療費をタイムリーに支出。
- 受益者連続型 で「妻→長男→孫」と多世代承継を一括設計。
不動産
- 空き家となった実家を受託者が売却し、その代金を親の生活費に充当可能。
- 収益物件の場合、修繕・再投資を家族の判断で機動的に実行。
税務
- 受益者課税を活用し 配偶者の税額軽減 をスムーズに適用。
- 条件を満たせば 小規模宅地等の特例 も利用しやすい設計が可能。
事例3選
Case 1:賃貸アパートオーナー(80 代・父)
長男を受託者に設定。家賃収入で父の医療費を賄い、適切なタイミングで大規模修繕を実施。認知症発症後も経営が継続し、資産価値を維持。
Case 2:自宅+金融資産 1 億円の夫婦
長女を受託者とし、自宅と証券口座を信託。受益者連続型で「夫→妻→長男→孫」を指定。名義変更や遺産分割協議が不要 となり、配偶者も住み慣れた自宅に終身居住。
Case 3:障がいのある子を持つ家庭
6000 万円の投資信託を信託銀行へ託し、両親死亡後も 毎月 20 万円 を子の口座へ送金。余剰金は兄弟へ帰属させることで公平な分配を実現。
注意点・デメリット

- 受託者の事務負担:帳簿作成や年次報告が必要。
- 対象外資産:生命保険や一部上場株式は金融機関制約が残る。
- 設定コスト:公正証書作成・登記・専門家報酬などで 数十万円 規模。
- 税務リスク:名義移転形態によっては 贈与税 が発生する可能性。
- 家族間トラブル:受託者の人選・報酬設定が不公平感を招かないよう配慮が必要。
まとめ――“争族”を防ぎ、資産を未来へつなぐ
家族信託は、高齢化社会が抱える 財産凍結問題 をクリアしつつ、相続・介護・事業承継をワンストップで設計できる 次世代型の財産管理ツール です。とはいえ、契約の設計を誤ると税務負担や家族対立の原因にもなりかねません。
早期から情報収集と専門家活用を行い、「わが家仕様」の最適な信託プランを設計してみてください。
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