国際結婚した配偶者の相続権とは?日本と外国の法律の違いと実務上の注意点

日本人と外国人の国際結婚は珍しいものではなくなりました。厚生労働省の統計によれば、近年は年間約2万件前後の国際結婚が報告されており、全婚姻数の3〜4%程度を占めています。夫婦の生活の場が日本国内にとどまるとは限らず、配偶者や子どもが将来どの国で暮らすかによって、財産の所在や法律の適用関係は大きく変わります。
特に相続が発生した場合、「どの国の法律が適用されるのか」「配偶者の権利は守られるのか」といった点で大きな戸惑いを感じる方が少なくありません。日本の相続制度に慣れていると「配偶者の取り分は必ず法律で守られている」と思いがちですが、外国法ではそうとは限らないのです。
本記事では、日本と外国の相続制度の違いを整理しながら、国際結婚における配偶者の相続権について実務的なポイントを解説します。
国際結婚と相続権の基本
日本法では、配偶者は常に相続人です。法定相続分は以下のとおりです。
- 子どもがいる場合:配偶者1/2、子ども1/2
- 子どもがいないが直系尊属(親など)がいる場合:配偶者2/3、尊属1/3
- 子どもも直系尊属もいない場合で兄弟姉妹が相続人となるとき:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
さらに、配偶者には最低限の取り分を確保する遺留分が認められており、仮に被相続人が遺言で極端に不利な内容を定めていても、配偶者は一定の金銭請求が可能です。
一方、外国法では必ずしも配偶者が強く保護されるとは限りません。イスラム法を採用する国では、夫が亡くなった場合に妻が得られるのは全財産の1/4(子どもがいれば1/8)に限定されます。アメリカやヨーロッパ諸国では「コミュニティ財産制」や「遺留分制度」などがあり、日本の感覚とは異なる相続制度となっています。
日本の法律における国際相続のルール
国際相続で最も重要なのは「どの国の法律が適用されるか」です。
日本では、2019年に施行された「法の適用に関する通則法」の改正後も、相続の準拠法は被相続人の本国法(国籍法)と定められています。動産・不動産を問わず一元的に適用されるのが原則です。
ただし、不動産の物権の効力や登記手続は「所在地法」に従います。つまり、相続全体のルールは国籍国法に従いつつも、不動産の扱いはその国の不動産法規に基づいて処理する必要があります。
例えば、日本国籍の夫が亡くなった場合、原則として日本の相続法が適用され、外国籍の妻も日本の法定相続分を取得します。一方で、外国籍の夫が日本に住んでいて亡くなった場合は、その人の国籍国の法律が原則適用されます。ただし日本に所在する不動産の登記などは日本の法制度に基づいて処理しなければなりません。
外国法における配偶者の保護の違い

国によって配偶者の相続権の扱いは大きく異なります。
- アメリカ
州ごとに法律が異なります。カリフォルニア州などの「コミュニティ財産制」州では、婚姻中に築いた財産は夫婦が各1/2を所有します。配偶者は元々自分の1/2を持ち、残りの1/2が被相続人の遺産として遺言や州法で処理されます。
- ヨーロッパ諸国
フランスやドイツには遺留分制度があり、配偶者や子どもの最低限の権利は強く守られます。例えばフランスでは、配偶者は「遺産の1/4を取得」するか「全体の用益権(usufruit)」を取得するかを選択できる制度があります。
- イスラム法圏
クルアーンの規定に基づき、配偶者の取り分は明確に定められています。夫死亡時に妻が相続できるのは1/4(子ありの場合は1/8)、妻死亡時に夫が得るのは1/2(子ありの場合は1/4)です。
- 中国や韓国
制度は日本と似ていますが、具体的な相続人の範囲や分割方法に差異があります。大枠では近い仕組みと考えられるものの、詳細は各国法に基づく確認が不可欠です。
実務で問題となるケース

想定される国際相続の典型例を挙げます。
- ケース1:日本人夫+外国人妻、日本在住で死亡
→ 日本法が適用され、外国人妻も日本法の相続人となる。
- ケース2:日本人夫+外国人妻、海外在住で死亡
→ 現地国法が優先され、日本法の保護が及ばない場合がある。
- ケース3:財産が日本と海外に分散
→ 日本にある財産は日本法、海外財産は現地法に基づいてそれぞれ手続きを進める必要がある。翻訳やアポスティーユ取得など事務負担が大きくなる。
- ケース4:遺言がない場合
→ どの国の法律が適用されるかによって配偶者の取り分が大きく変動し、十分に権利を守れないリスクがある。
配偶者を守るための実務対応
国際結婚した夫婦が安心して生活するには、事前準備が不可欠です。
遺言作成
日本と外国の両国で有効となる形式を検討することが大切です。1961年の「遺言の方式の準拠法に関する条約」により、一定の範囲で遺言の有効性は国際的に尊重されます。ただし、各国ごとに「二重の遺言」を作る場合は、互いに矛盾や取消しが生じないよう専門家の調整が必要です。
専門家への相談
国際相続に詳しい弁護士・行政書士・税理士に相談することで、各国法のリスクや税務の問題を事前に把握できます。
大使館・領事館の活用
在日外国大使館や領事館は、証明書発行や相続関係の書類手続をサポートしてくれる場合があります。
税務対応
日本に居住する場合は国外資産も課税対象となります(過去10年の住所歴による全世界課税)。
国外財産が5,000万円を超える場合には国外財産調書の提出も必要です。
また、非居住の相続人は日本で相続税を納めるため「納税管理人」の選任が求められる点にも注意が必要です。さらに、日米など二重課税の可能性がある国では、外国税額控除などの制度を利用して調整を図ることになります。
まとめ

国際結婚における配偶者の相続権は、日本と外国で大きく異なります。日本では配偶者の法定相続分や遺留分がしっかり保障されていますが、外国法の下では十分に守られないこともあります。
特に、財産が複数国にまたがる場合には「どの国の法律が適用されるのか」「不動産登記はどの国のルールに従うのか」を明確にしておかないと、相続手続が複雑化し、配偶者の権利が不十分となる恐れがあります。
大切な配偶者を守るためには、遺言作成・専門家相談・国際的な税務対策が欠かせません。早めに準備をしておけば、安心して未来を託すことができるでしょう。
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