共有名義不動産の相続トラブルを未然に防ぐ
共有名義とは、1 つの不動産について複数人がそれぞれ法律上の所有権(持分)を保有している状態を指します。相続では“とりあえず法定相続分で登記”という手軽さから選択されがちですが、その瞬間から意思決定に全員の同意が必要な資産へと変わり、潜在的な火種を抱えこむことになります。
相続後の「誰が住む?」「売る?」「管理費は誰が?」といった問題は、共有状態が原因で起こります。
本記事は、そのリスクと具体的な解決策を網羅的に解説します。
共有名義が生まれる理由と基礎知識
共有名義が誕生する典型パターン
- 法定相続分での登記:共同相続(民法 898 条)の原則に従い、暫定的に法定割合で共有登記を行うケース。
- 遺言の不備:遺言書に具体的な不動産配分がなく、協議未了のまま共有状態へ。
持分の考え方
登記簿には「○ 分の ○」と割合だけが記され、物理的な区画を示すわけではありません。したがって 1/4 持分でも建物全体を“1/4 面積”だけ自由に使えるわけではなく、管理・処分には共有者全員が影響を受けます。
共有が続くことで発生する主なリスク
- 管理行為のハードル:修繕・賃貸などは持分の過半数同意が必要。
- 処分行為のハードル:売却・抵当権設定は全員同意。
- 放置による資産価値の下落:空き家化や固定資産税滞納のリスク。
- 世代交代で共有者がネズミ算式に増加:数珠つなぎ相続が権利関係を複雑化。
典型的トラブル事例
対立構図 | 発生要因 | 帰結 |
売却派 vs 居住派 | 生活拠点・住宅ローンの有無など個別事情の相違 | 売れずに空き家化 → 税・保険料だけ増加 |
管理費・税負担の押し付け合い | 賃料収入ゼロでも毎年固定費が発生 | 滞納 → 延滞金 → 差押えの危険 |
連絡不全・意思疎通不足 | 遠方在住や相続人の高齢化 | 合意形成不能 → 調停・訴訟へ |
感情的対立の背景には、各相続人のライフプランや経済状況の差があるため、早期に“事実と数字”を共有することが解決の第一歩です。
解決策ロードマップ
以下の 3 つが代表的な共有解消のルートです。円満度・費用・期間・確実性がそれぞれ異なるため、順を追って検討しましょう。
- 遺産分割協議で整理(代償分割・換価分割) … 最も円満にまとまりやすい
- 持分の買取・譲渡 … 身内間で完結できれば早期解決
- 共有物分割訴訟 … 合意不能時の最終手段
ここからは、それぞれのルートについて詳しく解説していきます。
遺産分割協議による整理
単独名義化(代償分割)
一人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を支払う方法。ローンや自己資金で代償金を賄えば相手方は現金を得てすぐに関係が清算できます。
換価分割(売却して現金分配)
物件を第三者へ売却し、手取り額を相続分で分配。仲介手数料・譲渡所得税を事前に試算し「手残り額シミュレーション表」を提示すると合意が得られやすくなります。
持分の買取・譲渡
身内間買取
共有者自らが他の持分を購入し名義を一本化。売買契約書の作成と適正時価での取引により贈与税・譲渡所得税を回避します。
第三者売却の注意
投資家が安値で持分を取得し、残り共有者に高値で売りつける手口が増加中。最終的に共有物分割請求訴訟へ発展するケースが後を絶たないため、第三者売却は慎重におこなってください。
共有物分割訴訟という最終手段
手続き概要
- 弁護士へ依頼し訴状提出
- 主張立証・不動産鑑定
- 和解勧告→判決(現物分割・競売・価格賠償)
目安費用・期間
手続き | 印紙・実費 | 弁護士着手金 | 所要期間 |
遺産分割調停 | 数千円程度 | 数十万円程度 | 数か月〜1年以上 |
共有物分割訴訟 | 評価額に応じた印紙代 | 数十万〜百万円程度+成功報酬 | 半年〜数年 |
費用だけでなく「解決までの時間」と「精神的負担」もコスト。交渉段階から専門家へ相談することで、裁判に至らず終結する例は多いです。
「放置しない・曖昧にしない・先延ばしにしない」
- 共有名義は時間が経つほど解決コストが増す資産。
- 相続直後から ①財産目録の共有 → ②早期の遺産分割協議 → ③専門家活用 の 3 ステップを実行。
- すでに共有状態でも 換価分割・持分買取・訴訟 と選択肢はある。現状分析を行い最適ルートを選びましょう。
「共有名義で悩んだら、まずは相談を」
感情的対立に発展する前に専門家へ早めに相談することが、もっとも確実で安価なトラブル回避策です。
遺産相続に関わる相続税や所得税など、税金に関わる手続きはケースによってそれぞれ異なります。
「複雑でよく分からない」という場合には、相続申告コンシェルジュにご相談ください。
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